「暮らしの中の伝統工芸」展/MOA美術館

熱海のMOA美術館で、1月23日まで「暮らしの中の伝統工芸」展が開かれています。

日本工芸会の各分野の作家が、日々の生活に根差した作品を展開します。その舞台として私の大きなテーブル「八橋」が陳列されます。MOA美術館という大きな空間でこのテーブルがどのように存在感を示せるか楽しみです。ぜひご高覧ください。

 

2017.12.16|| - 2018.01.23|| 

リニューアルオープン記念特別企画

「暮らしの中の伝統工芸」

http://www.moaart.or.jp/events/kurashi20171216/

 

ウォールナット大テーブル「八橋」 

Black Walnut Table "Yatsuhashi (Zigzag Bridge)"

 

 

 大きなアメリカンブラックウォールナットの丸太から、二枚続けて製材した幅広の板を、本を開くように並べ(ブックマッチ)テーブルとした。ウォールナットは古くから人気の材だが、大きな材は本当に珍しくなった。このテーブルも20年ほど前に何の当てもなく購入した丸太から作ったものだ。

 テーブルに銘をつけるのも珍しいが、古くから作られてきた水辺の木橋を連想させる甲板の並べ方と脚の構造からから「八橋」と名付けた。 

 池にかかる八橋 Zigzag bridge in the pond on garden. 

 ところで根津美術館の国宝「燕子花図屏風」は言うまでもなく伊勢物語に題をとっている。というより燕子花とくれば作者の意図がどうあろうとも伊勢物語と関連づけられる。それほど知られたテーマであり、そうであればそこに八橋が添えられるのもまた定番である。伊勢物語の九段「かきつばた」では三河の国にある八つの橋の架かる所として語られているが、今では庭園などの水辺にある簡易な構造の橋を意味することが多い。

 甲板の一枚は平滑に仕上げられ、他の一枚はわざと鉋目を残し、更に幾分高さを下げ、材の色も年を経た濃色に科学的に処理することによって、お客様をお迎えする側の謙った気持ちを表すように考えた。またその平行を避けた並べ方によって、相対する方々の目線が直交するのを避けている。

 脚の部分には甲板と対照的な色と質感を持つ玉杢の美しい楓の材を使っている。大きなテーブルなので組み立て式とし、脚はボルトで固定され、その黒色キャップボルトもデザインのポイントにした。また脚は甲板の上まで伸びており「八橋」の名の由来ともなっている。

 長年大切にしてきた、今では入手困難なウォールナットの幅広板の存在感を十分生かしたく、相当大きなテーブルなった。また構造も一風変わっているが、一般的に四角や丸で変化に乏しい実用的な単なるテーブルを超えた存在となるよう考えた。

橋は端と端を結び、道の終点であった端は橋によって新たな世界へ繋がり、人と人を結びつける大切なもの。このテーブルを囲む人々が共に和やかな時を過ごし、平安な心を共有できることを願った。

前述の光琳の屏風には、その決まりとも言うべき八橋が描かれていない。しかしこの屏風を見る人は心の中で八橋をかけているのだろう。さらに光琳は描かないことによって通俗的な伊勢物語を入り口に人々をこの世とは思えない空間と時間に誘っている。私はこの屏風の前に立つと燕子花の群れの中にすいこまれ自分が今いる場所も時も忘れてしまうような不思議な感覚に陥るのを常とする。そこにあえて八橋である。この屏風の前に私の「八橋」を置いてみたい。密やかな願望である。

 

Yatsuhashi (Zigzag Bridge) Black Walnut Table

 

This table consists of two large planks of walnut that have been book-matched, that is to say. As its form and the shape of its legs resemble a traditional type of Japanese bridge, I named the work ‘Yatsuhashi’ (Zigzag Bridge). 

One of the boards has been given a smooth finish while the other retains the lateral marks of a plane and is slightly lower, expressing welcome towards a guest.  Furthermore, the way in which the planks have been juxtaposed to avoid being parallel allows people sitting opposite each other to avoid meeting each other’s eyes. 

 

Made from Figured Japanese maple the table legs are a complete contrast to the top in both color and texture.   The whole table is quite large and has been designed to make it possible to be disassembled, the legs being held in place with black Allen bolts that form a feature of the design.  The legs extend above the tabletop, thus creating the image of the zigzag bridge for which it is named.