第16回伝統工芸木竹展のご案内

第16回伝統工芸木竹展-木工藝 須田賢司

写真は今展の最高賞(文部科学大臣賞)を受賞した藤塚松星氏の“彩変化花籃「日月」”

 6月21日から27日まで日本橋三越6階美術特選画廊にて、「第16回伝統工芸木竹展」が開催されます。21日には群馬県立美術館長佐々木正直先生、25日(日)には近美工芸館の諸山正則先生のギャラリートークが行われます。また他の日にも出品作家による「自作を語る」が行われます。私は会場当番で23日は終日おりますが、他の日にもなるべく会場におります。今回さらに新しい試みとして、会場にて作家の制作の様子を記録したビデオ10編を随時上映いたします。ぜひお出かけください。

 ご承知の通り、日本工芸会は毎年秋に文化庁などと共催で「日本伝統工芸展」を開催しています。この展覧会は今年64回を迎える歴史ある展覧会として評価をいただいていますが、日本工芸会はこのほかにも各地方支部ごとの支部展、さらに工芸会を構成する7部門ごとの部会展を開催しています。

 その中で木竹工作家による部会展が「伝統工芸木竹展」です。本年で16回になりますが、その歴史は45年前に遡ります。昭和47年(1972年)に単独の「木竹新作展」としてスタートいたしました。57名による出発でした。その後、連続開催の機運が高まり第2回伝統工芸木竹展として昭和60年に開催されました。しかし、毎年開催とはならず、数度の変遷をへて平成17年第10回展から隔年開催となり今に至っています。この間私たちを取り巻く環境も大きく変わりました。第1回展から出品を続けている会員は数名となり、それなりに次の世代、また次の世代へと受け継がれてまいりましたが、近年出品者は漸減傾向にあり、特に次代を担う40代以下の若い出品者が少なくなりつつあります。
 言うまでもなく、私たち木竹工作家が素材とする木材や竹材の多くは日本の自然・風土に育てられたものです。その素材の美しさをよりどころとして発展してきた木竹工芸は、日本を代表する工芸であると自負しています。また植物としての樹木が生育する場であれば地球上どこでもいろいろな形で行われる木工芸は、それだけに「世界共通言語」ともいえましょう。また竹材は温帯アジアの特産であり、工芸として存在するのは今では日本だけと言ってよく、その意味で特殊性が世界的に評価されつつあります。共通言語と特殊性、相反する世界のようですが、目指すところは素材の美しさに依拠し、高度な技術によって生活の中で使われる物の形を借りて美を表現する、日本の伝統的美意識、まさに「伝統工芸」という言葉で言い表してきた世界の表現です。これこそが日本の美の伝統の正統と理解できるのではないでしょうか。
 ところが先述のとおり、若手後継者が少ない現実があります。人口の減少、高齢化も大きな理由でしょう。しかしそれ以上に現在の経済的価値観と相いれない、自然素材を対象とした手間と時間のかかる制作の実態や技術習得の困難さがあります。そのなかでも今回100名近くの出品を得て第16回展が開催されることは作家諸氏の一方ならぬ努力の結果と言えます。
 私は今展の実行委員長・鑑審査委員長を務めさせていただきましたが、思い返せば、長い中断の後再開され定期開催となった第二回展にて、当時の最高賞「文化庁長官賞」をいただいた時の喜びを思い出します。三浦朱門先生が長官の時で、私はちょうど30歳。とても勇気づけられました。それから30年以上がたちますが、裏方として会運営のお手伝いをしている目の前で決まった思いがけない受賞は忘れられません。
 ぜひこの機会に木工芸、竹工芸の世界にご関心、ご理解をいただき、特に若い作家を励ましていただきたくご案内をいたします。

第16回伝統工芸木竹展 実行委員長・鑑審査委員長
須田賢司