「 今 月 の 是 眞 」

~展示室より~

 

柴田是眞が原画を描き 日本橋はいばらが出版した刷り物「花くら遍」。

ギャラリーでは季節に合った画題の作品を展示中です。

 

 九月といえば九日が重陽の節句、九と九の陽の数字が重なるこの日は別名「菊の節句」とも呼ばれ、菊と縁の深い季節。そこで今月の是眞は菊が中心です。菊には邪気を払い長寿の効能があるといわれ、「菊花酒」や「菊の被せ綿」などで親しまれてきました。またこの時期は各所で「菊見」が開かれます。そこでは趣向を凝らした菊花が並びますが、糸菊」もよいものです。また重陽の室礼には「菊玉」が似合います。

 

 九月になれば食欲の秋、芋名月とも呼ばれるように、里芋のおいしい季節です。ちなみに今年の芋名月は九月二十四日。是眞は里芋の茎「芋茎」を描いていますが、これも素朴でおいしいもので、白和えにすればちょっと高級な印象に。そこに菊を添えるのも是眞らしい。

 もう一つ、月は秋のお彼岸です。菩提寺の法要へお出かけになることもあるのでは。仏様を供養するために撒かれるのが「散華」。ハナは花でも多くは紙でできた花びらで、持ち帰って箪笥に入れると衣装が増えるといわれましたが、、、

 最後に、今を盛りと咲き誇る菊の傍で、往く夏を惜しむように最後の花を咲かせる「うらなりの朝顔」がけなげです。

 

 今月も是眞の花は多彩です。