【展覧会】第64回日本伝統工芸展/日本橋三越ほか

第64回日本伝統工芸展―木工藝 須田賢司

 今年も日本伝統工芸展の季節となりました。第64回日本伝統工芸展は920日(水)~102日(月)まで日本橋三越7階ギャラリーにて会期中は無休で開催されます。この東京展の後、来年3月にかけて全国10か所を巡回します。

 今回展では全体に出品点数が減少していますが、木竹工部門も例外ではなく、約1割出品者が減少しており、大変残念です。

 また鑑審査も例年以上に厳しく、入選点数は、前回展が91点に対し、今回展では87点に留まりました。また今回、一般の入選は73点で昨年より8点減少しました。なかなか厳しい鑑査でしたが、今後も多くの方のチャレンジを期待しています。

楓嵌装箱「ゑりいし」―木工藝 須田賢司

 さて私は今回、「楓嵌装箱『ゑりいし』」を出品しています。シカモア材を使った背の高い、「碑(いしぶみ)」を思い起こさせる形です。何かと物騒な世の中に平安を願い沖縄の「平和の礎(いしじ)」を思いながら制作しました。ただ今作の「ゑりいし」とは漢字をあてれば「彫り石」のことで、文字を刻んだ石碑を表す普通名詞です。ですから具体的にどこかの石碑を指し示しているものではありません。石碑は過去の事績を伝え文明の文字通り「礎(いしずえ)」となったものです。常に私の関心をひき、過去には「碑林玄英」という作品となって、今は大英博物館に所蔵いただいています。

 この作品はその「ゑりいし」が、斜めに吹きつける雨の中、人々の思惑から離れて粛然とたたずんでいる、そんな心象風景をシカモアの縮杢で具体化したものです。

 

楓嵌装箱「ゑりいし」内部―木工藝 須田賢司

 蓋、というより箱本体を持ちあげると、中には桜と楓で作った内箱が交互に4段重ねになっています。桜と楓の組み合わせで春秋、一年を象徴しています。

 台は同じシカモアに拭漆を施しました。黒漆ではなく、生漆を使い褐色に仕上げています。箱の稜線に象嵌された朱色の梨材と相まって明るい印象になりました。

 また箱と台は銀金具で締結されています。ご高覧、ご批評をお願いいたします。

 詳しい情報は日本工芸会ホームページをご覧ください。